人類の進化に対する月の悪い影響と肯定的な側面
月は地球から分離する際に「最悪の力」を引き受け、これによって地球が人類の進化に適した状態になったとされています。月の物理的、エーテル的、アストラル的な側面には「劣悪で退廃的な」存在や感情が関連付けられています。しかし、これは物語の一面に過ぎません。宇宙の摂理として、深く沈んだ劣悪なものは、より高次の存在によって浄化され、宇宙の経済において再利用される必要があります。このため、月にはヤハウェのような「高く、非常に高い霊的実体」や、悪を善に、醜さを美に変える力を持つ「高次の存在」も宿っているとされます。これらの高次の存在は、月の低い力を善へと導く役割を担っています。悪と醜さが存在する必要があったのは、それらがなければ人間は自己形成された、閉じられた存在になることができなかったためであり、月の力が人間の進化、特に現在の固定された形態の形成に不可欠だったと説明されています。
エジプトの神話におけるオシリスと月の満ち欠けの宇宙的な意味
エジプト神話のオシリスは、元々、霧に覆われた地球に太陽の光をもたらす存在として認識されていました。人間が呼吸を始めた時、一体であったオシリスとセトは分離し、セト(またはテュポーン)は呼吸を、オシリスは太陽の光としての働きを担うようになりました。太陽が地球から離れると、オシリスは月と共に去り、月から太陽の光を地球に反射する役割を担うことになります。この月の光の反射は、新月から満月までの14日間で14の異なる形を取るとされます。この14の月の姿は、神話においてオシリスが14の断片に切り分けられたことと対応しており、オシリスの「再発見」や「復活」が月の満ち欠けのプロセスとして象徴されています。宇宙的な意味では、この月の14の相が、人間の脊髄に14本の神経線維を形成する原因となったと説明されており、人間が呼吸を学び、自我の最初の芽生えを経験したことと密接に結びついています。
オシリスとイシスの人間の神経系と性の二元性への影響
月の満ち欠けには、オシリスの影響だけでなく、イシスの影響も深く関わっています。新月から満月までの14日間はオシリスの影響とされ、これが人間の脊髄に14本の神経線維を形成しました。一方、満月から新月までの14日間はイシスの支配下にあり、このイシスの影響によってさらに14本の神経線維が脊髄から生じるとされます。これにより、合計28本の神経線維が形成され、これらが人体の特定の器官の起源となっています。
さらに、これらのオシリスとイシスの影響は、性の二元性(男性と女性)の発生にも関連しています。月が外部から作用し始める前は、人間は男性と女性の両方の性質を持つ一体の存在でした。オシリスとイシスの交互の作用によって性別が分離し、イシスの影響が優勢な場合は男性、オシリスの影響が優勢な場合は女性になると説明されています。この教えでは、すべての男性に女性のエーテル体があり、すべての女性に男性のエーテル体があるという、内的な両性具有の考え方も示されています。
人間の肺と心臓のオシリスとイシスの影響
太陽と月の影響を受けて形成された28本の神経線維の共同作用は、外的な男性と女性だけでなく、人間の内部にも影響を与えました。内的なイシスの結果として「肺」が形成されたとされています。肺はテュポーン(セト)の影響を調整する役割を担い、オシリスからの影響は、女性的な影響を男性的な方法で刺激することで、呼吸を通じて肺を生産的にします。
さらに、男性原理と女性原理は、太陽と月の影響によって調節されます。すべての女性には男性的なもの(喉頭)があり、すべての男性には女性的なもの(肺)があるとされます。イシスとオシリスは、人間の高次の本性に関して、すべての人の内面に働きかけ、すべての人が肺と喉頭を持つことで「二つの性を持つ」と見なされます。
イシスとオシリスが低次の性質から自身を「引き離した」後、彼らは未来の地球人の創造主である息子「ホルス」を産みました。このホルスはイシスによって守られ、育まれた「人間の心臓」を象徴しています。心臓は母なるイシス(肺)の翼によって守り育てられたと表現されており、エジプトの神秘学派では、人間の高次の性質が男性と女性の両方を持つもの(インドのブラフマーに相当)として捉えられていたことが示されています。
人間の呼吸の始まりと結びついた宇宙的な現象
人間の呼吸の始まりは、太陽と月の分離、そして月の特定の活動と密接に関連していると説明されています。古代の地球は霧と蒸気に覆われており、まだ空気はありませんでした。エジプト神話のオシリスとセトが分離した瞬間が、人間の中に空気呼吸が始まった時とされています。セト(またはテュポーン)は「風の息」として、呼吸を人間に取り込む役割を担いました。
そして、月が14の異なる相、つまり新月から満月までの14日間で太陽の光を反射する現象が完全に確立された時に初めて、人間は呼吸ができるようになったと強調されています。この現象によって人間は物理世界と結びつき、自我の最初の芽生えが可能になったと述べられています。呼吸の開始は、月の周期的な影響と、人間の本質的な進化との間の深いつながりを示す重要な転換点として描かれています。
悪や醜さが存在することの哲学的の進化論的な意味
悪や醜さが存在することのには必要性があります。「なぜ、そもそも悪と醜さは存在しなければならなかったのでしょうか?」「もし、それらがなければ、何か他のものが生まれることは決してなかったでしょう。だから存在しなければならなかったのです。もし、それらがなければ、人間は自己形成し、自己完結した存在になることは決してできなかったでしょう。」と明確に述べられています。
これは、進化の過程における苦難やネガティブな要素が、より高次の発展のための触媒であるという考え方を示しています。もし地球が太陽の力だけにさらされていたら、人間の形態は無限に流動的で固定されず、今日の形にはなり得ませんでした。反対に、月の力だけが作用していたら、人間は誕生の瞬間に硬直化し、ミイラ化していたでしょう。人間は「無限の可動性と完全な硬直性の間の二つの極限」の中で進化しているのであり、悪や醜さ、そしてそれらをもたらす月の力が、人間が現在の自己完結した固定的な形を獲得するためには不可欠だったのです。
ヴェーダの詩の描写とエジプトの神秘学派の教えとの関連
リグ・ヴェーダの詩で「下から七つ、上から八つ、背後から九つ、岩の天井の土台から十、内側から十が人の上にやって来る。その間、母親は乳飲み子を養う。」と述べられている部分は、エジプトの神秘学派における「オカルト解剖学」の教えと深く関連付けられています。
この詩は、人間の呼吸器官と発声器官の神秘的な働きを象徴していると解釈されます。ここで「母親」は肺を指し、「乳飲み子」は人間の心臓を指します。心臓は、肺という「母なるイシス」の翼によって守られ、養われる存在として描かれています。また、声が喉音や肺音、そしてアルファベットの文字に分化する過程が、さまざまな方向から来る「音」として表現されており、人間の音声生成器官の複雑な働きを示しています。
これは、古代インドとエジプトの教えの間に見られる共通の知恵、すなわち人間の高次の本性が男性と女性の両方の性質を持つもの(インドのブラフマー)として認識されていたことを示唆しており、宇宙の力が人間の身体の特定の器官の形成にどのように影響したかを象徴的に説明していると考えられます。
太陽と月の力が人間に及ぼす「駆動する力」と「ミイラ化する力」
ここでは、太陽と月の力が人間に及ぼす影響を、それぞれ「駆動する力」と「ミイラ化する力」と表現しています。
- 駆動する力(太陽の力): もし地球が太陽の力だけにさらされていたら、人間の形態は「最高の度合いまで動きが増し」、地球は人間には不可能な「テンポに達し」、人間は現在の固定された形態を持つことはできなかったでしょう。これは、太陽の力が無限の可動性、絶え間ない変化、そして加速された進化をもたらす性質を持っていることを示唆しています。もし月が取り去られたら、人間の動きは「痙攣的になり」、内部的に「完全に動き回り」、手足が「巨大なものへと伸び、そして再び縮む」など、変態の力が「巨大なものへと増大する」ことになったとされています。
- ミイラ化する力(月の力): 反対に、月の力だけが作用していたら、人間は「すぐに硬直し」、誕生の瞬間にその形が「固まり」、ミイラとなって「永遠に固定された」でしょう。これは、月の力が形態を固定し、硬直させ、物理的な存在を安定させる性質を持っていることを示唆しています。もし太陽が取り去られたら、人間は「ミイラのように硬直し」、その形を「二度と失うことはない」と述べられています。
人間は、この二つの極端な力、すなわち「無限の可動性」と「形態における硬直性」の間に「挟まれて」進化しており、太陽と月の影響の間の均衡が、人間が現在の安定した形態を持つことを可能にしています。物理的な月は、この「形成する力」を内包しているため、「スラグ」となったと表現されています。